モトアザブ退屈日記

日々のモノ・コト・忘備録。クルマ、時計、オーディオとか骨董とか。

リコーの古い時計 ① ダイナミック・ワイド・デラックス 30石

緊急事態宣言下、外出もままならず腕時計をして外出する機会も減っているのですが、久しぶりにオクで古い機械式時計に手を出してしまいました。

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リコーの機械式時計

RICOHは複写機やデジカメGRシリーズで有名ですが、かつては機械式時計も製造していました。

国産アンティーク時計好きの間では“幻の時計メーカー”といわれるタカノというブランドがありました。伊勢湾台風(1959年9月26日)の被害本社工場が壊滅的な被害を受けますが、その翌年には当時としては世界で最も薄い厚さである3.5mmの手巻き時計“タカノシャトー”の開発に成功するなど、優れた技術力で当時の日本の時計産業を牽引した会社でした。このタカノを製造していた高野精密工業、伊勢湾台風被害による生産へのダメージを回復できず、1962(昭和37)年に現在のリコーの傘下になります。リコーの機械式時計はそのタカノの技術が活かされている機械式時計なのです。

 

ダイナミック・ワイド・デラックス 30石

12時位置に英語フルスペルと日本語の曜日表示、6時位置に日付表示。日付位置サイクロップレンズ付きで配されます。フルスペルの曜日表示が“ダイナミック・ワイド”の由来でしょうか。シンプルなペンシルハンド。デラックスモデルは日付を早送りする機械式のプッシュボタンが備わります。三十日月には便利な機能です。

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ダイナミック・ワイドには石数の違いで下記のラインナップがありました。

 

・ダイナミック・ワイド(25石)

・ダイナミック・ワイド・デラックス(30石)

・ダイナミック・ワイド・ハイ・デラックス(35石)

 

“ワイド”や“デラックス”“ハイ・デラックス”の語幹が当時の雰囲気。

TV番組だったり、お酒だったり、クルマだったり。

デラックスやワイド、その上は“Hi”で差別化を図った時代。

ちょっと大きく、ちょっと豪華に…高度経済成長期の気分ですね。

 

RICOHデザインの味わい深さ

リコーの腕時計は何種類か持っているのですが、どれも味わい深いデザインがイイ感じです。一目で分かるセイコーの時計とは一線を画した意匠です。当時としては攻めたデザイン、セイコーほど洗練されていないけれど、その”やりすぎた感じ”が今見るとホッとするような味わい深さに繋がっているような気がします。

 

プッシュボタンを埋め込み、緩やかにラグと一体となるケースの曲面の構成は一見シンプルなようですが秀逸なデザイン処理だと思います。リュウズにはRICOHの“R”文字。

植字のアワーマーカーは非常に立体的。ワイド・デラックスの“W”や“DX”も植字で高級感があります。

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ケースはスレ傷はありますが、大きな傷はなく、金属磨きで磨くだけできれいになりました。ただ、プラ風防は劣化しており、内部に小さなクラックが見えます。

プラ風防をデッドストックに交換したいところですが、とりあえずケースと風防、ペンシルハンドの磨きで日常使用には問題なさそうです。

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このワイド・デラックス(34803)は文字盤色が独特です。経年の影響もあるのか、微かにブラウンが入ったグレーのサン・レイ仕上げです。立体的なアワーマーカーも相まって、光の当たり方によって時計の表情が大きく変わります。他のリコーのシルバー系文字盤では見られない、スモーキーな色合いが気に入っています。